今日は、hiyokoです。総合病院で薬剤師として勤務しています。
医療の進歩により、生命維持治療によって長期間の生存が可能となりました。その一方で、「どこまで治療を続けるべきか」「患者本人の意思をどのように尊重するべきか」といった倫理的課題が生じています。
終末期医療は日病薬認定薬剤師試験でも出題されやすいテーマの一つです。
この記事では、終末期医療に関する基本的な倫理原則や重要な考え方について、試験対策として整理していきます。
医療倫理とは
医療倫理とは、医療従事者が患者に対して適切な医療を提供するための行動規範です。
医療現場では、単に医学的に正しい治療を行うだけでなく、
- 患者の意思を尊重する
- 苦痛を軽減する
- 公平な医療を提供する
といった視点が求められます。
医療倫理の4原則
試験ではまず「4原則」を押さえることが重要です。
自律尊重原則(Autonomy)
患者自身が治療方針を決定する権利を尊重する考え方です。
具体例
- インフォームド・コンセント
- 治療拒否の意思表示
- ACPの実施
などが該当します。
善行原則(Beneficence)
患者に利益をもたらす行為を行う原則です。
医療者は患者にとって最善と考えられる医療を提供する責務があります。
無危害原則(Non-maleficence)
患者へ害を与えないという原則です。
有名な言葉として、「まず害をなすなかれ」があります。
正義原則(Justice)
医療資源を公平に分配する考え方です。
年齢や社会的地位によって医療提供に差が生じないよう配慮する必要があります。
インフォームドコンセント
治療について、医療者が一方的に決めるのではなく、患者と話し合って方針を決めることを言います。
患者が拒否しているのに治療を行うことは出来ません。
薬剤師についても、例えば患者が薬を飲むことを拒否しているのに、窓口で飲むよう説得する、という内容では良い治療とは言えません。
治療効果の向上や、病状の改善、など薬を内服することによるメリット、飲まない場合に予想される病状の悪化などのデメリットを表示した上で、患者さんやご家族に最終的にどうするかを決定して頂くことが重要になります。
個人情報の保護
医療機関で得られた記録や電子カルテ、また個人が発信しているSNSについても守秘義務が徹底されます。
患者さんだけでなく、職場で働く医療従事者についても個人情報が外部に漏れないようにする必要があります。近年は、学校やお店などでも個人情報保護の認識が高まってきていますよね。
個人情報が記載された媒体の資料などは、家などに持ち帰らず、職場内でのみ閲覧・使用する必要があります。使用後の媒体は、対象者が特定できない形で処分する必要があります。
近年は、カルテの内容をSNSに上げる事例も報告されていますが、患者の個人情報を守るため、絶対に行ってはいけません。
また、医療機関には自分の家族や知人などが通院している場合もありますが、病状が気になるから、などの興味本意でカルテを参照するケースも禁止されています。
終末期医療とは
終末期医療とは、治癒が期待できず死期が近い患者に対して行われる医療です。
単なる延命だけではなく、
- 身体的苦痛の緩和
- 精神的支援
- 社会的支援
- スピリチュアルケア
などを通じてQOLの維持・向上を目指します。
終末期医療の倫理とは
医療倫理の内、終末期の患者さんに持つべき倫理です。
医療従事者は患者さんのため、より良い治療を選択して行っていきますが、それでも残念ながら終末期を迎える患者さんもいらっしゃいます。
がん患者さんなど、終末期では延命治療の是非や、本人の希望を尊重する内容が挙げられます。
患者さんの意識がなかったり、会話が難しい場合は、ご家族に患者さんの意思を汲み取った上で決定して頂くことも多いです。
終末期医療で問題となる倫理的課題
生命維持治療の差し控え
生命維持治療を開始しない判断です。
例
- 人工呼吸器を装着しない
- 心肺蘇生を実施しない(DNAR)
などがあります。
生命維持治療の中止
すでに開始されている治療を終了する判断です。
例
- 人工呼吸器の離脱
- 人工栄養の中止
- 透析の中止
などが挙げられます。
治療の差し控えと中止は倫理的・法的議論の対象となっており、患者本人の意思確認や多職種による十分な検討が重要です。
ACP(アドバンス・ケア・プランニング)
近年の試験で特に重要なのがACPです。
ACPとは、「将来の医療やケアについて、患者本人が家族や医療者と繰り返し話し合うプロセス」を指します。
日本では「人生会議」という愛称でも知られています。
ACPの目的は、
- 患者の価値観を共有する
- 意思決定を支援する
- 本人の希望に沿った医療につなげる
ことです。
薬剤師に求められる役割
終末期医療において薬剤師は、
- 疼痛コントロールの支援
- オピオイドの適正使用
- 副作用管理
- 服薬負担の軽減
- 多職種カンファレンスへの参加
などを担います。
また、患者や家族の価値観を理解しながら医療チームの一員として意思決定支援に関わることも重要です。
薬剤師として感じる終末期医療の難しさ
過去、病棟業務を行なっていた時、終末期の患者さんに関わる場面もありました。
その際に、医療者側も、患者や家族側も薬物療法の選択に悩む場面があったのを覚えています。
治療の薬を続けたい。副作用が辛いからもう治療を辞めたい。薬を減らしたい。症状が良くなるように薬を増やしたい。患者さんや医療者側の考えも様々で、正解がない領域だなと感じました。
これまで予防目的で継続していた薬剤についても、余命や服薬負担を考慮し、中止を検討することがあります。
一方で、疼痛や呼吸困難などの苦痛緩和に関する薬剤は重要性が高く、患者さんのQOL維持に大きく関わります。
薬剤師には単に薬を管理するだけでなく、患者さんにとって本当に必要な薬物療法を考える姿勢が求められると感じています。
認定試験の勉強を通じて感じたこと
日病薬認定薬剤師試験の勉強を始めるまでは、終末期医療を「治療終了に関する問題」と捉えていました。
しかし学習を進める中で、過去自分が関わった業務を思い出し、患者さん本人の意思を尊重しながら最善の医療を考えるプロセスそのものが重要であることを改めて理解しました。
今は、直接終末期の患者さんに関わる機会は多くないですが、今後も倫理的な視点を持ちながら目の前の患者さんに対応していきたいと思います。
日病薬認定試験ポイント
覚えておきたいキーワード
- 医療倫理4原則(自律尊重原則、善行原則、無危害原則、正義原則)
- ACP(人生会議)
- DNAR
- QOL
よく出る論点
- 自己決定権の尊重
- インフォームド・コンセント
- ACPの目的
- 終末期における治療方針決定
- 多職種連携の重要性
まとめ
終末期医療の倫理では、患者の自己決定権と生命維持治療の在り方が重要なテーマとなります。
特に日病薬認定薬剤師試験では、
- 医療倫理4原則
- ACP
- DNAR
- 生命維持治療の差し控え・中止
を整理して理解しておくことが大切です。
薬剤師としては薬物療法の専門家であるだけでなく、患者の価値観を尊重した医療に貢献できる存在であることが求められます。
以上、hiyokoでした^^
以下の項目の試験対策としてまとめました。
日病薬病院薬学認定薬剤師認定試験 出題基準
Ⅰ.医療倫理と法令を順守する
Ⅰ-1:薬剤師の使命と責任
●医療倫理・終末期医療の倫理について理解している。


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