今日は、hiyokoです。総合病院で薬剤師として勤務しています。
近年、「薬剤耐性(AMR)」は世界的な問題となっています。
過去、世界では色々な抗菌薬が多数使われた結果、細菌たちが抗生剤に耐性を持ち、従来の薬ではやっつけられなくなったり、薬自体が効きにくくなる事例が発生しています。
抗菌薬が効きにくい細菌が増えることで、
- 治療が難しくなる
- 重症化リスクが上がる
- 医療費が増加する
など、多くの影響が懸念されています。
日本でもAMR対策を推進するために、「薬剤耐性(AMR)対策アクションプラン」が策定されています。
病院薬剤師としても、
- 抗菌薬適正使用支援(AST)
- DI業務
- 感染対策
- TDM
- 処方監査
など、AMR対策に関わる場面は非常に多いです。
また、日病薬認定薬剤師試験でも感染領域や医療安全分野で関連知識が問われることがあります。
この記事では、AMR対策アクションプランの概要や薬剤師の役割についてわかりやすく解説します。
薬剤耐性(AMR)とは?
AMR(Antimicrobial Resistance)とは、細菌などの微生物が抗菌薬に耐性を持ち、薬が効きにくくなることです。
例えば、
- 本来なら治療できる感染症が治りにくくなる
- 使用できる抗菌薬が限られる
- 重症化しやすくなる
などの問題が起こります。
抗菌薬の不適切使用は、耐性菌増加の大きな原因の一つとされています。
なぜAMR対策が必要なのか
世界的に耐性菌が増加しており、国際的な課題となっています。
このまま耐性菌が増え続けると、
- 感染症治療困難
- 手術後感染リスク増加
- がん化学療法への影響
- 医療コスト増加
などが懸念されています。
そのため、日本でも国を挙げてAMR対策が進められています。
厚生労働省のホームページでは次のように危険性が指摘されています。
AMRに対して、このまま何も対策がとられないと、2050年には全世界でAMR関連の死亡者数は毎年1,000万人に上り、がんによる死亡者数を上回ると言われています。

がんよりも亡くなる人が増えるってことだね。
例えば、高齢者や寝たきりの患者さん等は、嚥下機能が落ちてくる為、肺炎等が起こりやすいです。通常は薬で良くなるはずの肺炎が薬で治療できず、死に至るという自体が発生します。
怪我をして傷口から入ってきた菌に薬が効かず、傷口が化膿してしまう事態も考えられます。
薬剤耐性(AMR)対策アクションプランとは?
「薬剤耐性(AMR)対策アクションプラン」は、日本国内でAMR対策を推進するための国家的な行動計画です。
関係省庁が連携し、
- 抗菌薬適正使用
- 耐性菌対策
- 感染予防
- 研究開発
などを進めています。
厚生労働省が5年毎にアクションプランを作成し、6つの分野の目標に沿って、具体的にどのような取り組みを行うか、また全体を通しての数値目標を決めています。
AMR対策アクションプランの6つの柱
普及啓発・教育
国民や医療従事者へAMRについて啓発を行います。
例
- 抗菌薬適正使用の周知
- 風邪に抗菌薬が不要な場合があることの啓発
- 医療従事者教育
薬剤師も患者説明を通じて重要な役割を担います。
一昔前までは、風邪を引くとすぐに抗菌薬を処方される、ということもあったようです。現在は、風邪の原因の多くがウイルスによることが一般の方にも知識として広まりつつありますが、未だに病院で抗菌薬を希望する患者さんも……
また、かく言う私も新人時代、「薬剤の耐性?何それ?」「何でどの菌にでも効きそうな抗菌薬を処方しないんだろう?」など、思っていた時期があります。
一般の方のみならず、医療従事者に対してもAMRについての正しい知識を普及させていくことが大切です。
動向調査・監視
耐性菌や抗菌薬使用量を継続的に調査します。
例えば、以下が挙げられます。
- JANIS(厚生労働省が実施している院内感染サーベイランス事業)
- J-SIPHE(感染対策に関するデータを一元管理するシステム)
- AUD・DOT monitoring(抗菌薬使用密度と治療日数のモニタリング)
病院薬剤師が抗菌薬使用量集計に関わる施設も多いです。調査した内容は、抗菌薬の適正使用にも繋がります。
感染予防・管理
耐性菌を広げないための対策です。
例えば、以下の対策が挙げられます。
- 標準予防策
- 手指衛生
- 接触感染対策
- 院内感染対策
ICTやASTとの連携も重要になります。病院薬剤師では、病棟業務時の手指衛生や、感染対策ラウンドなどにも関連しています。
抗微生物薬の適正使用
AMR対策の中心とも言える分野です。
例えば、以下の内容が挙げられます。
- 不必要な抗菌薬投与を避ける
- 適切な投与量・投与期間設定
- 培養結果に基づくde-escalation
- TDM活用
病院薬剤師が大きく関与する領域です。
ASTで、
- 「カルバペネム系のAUDが増えてる」
- 「DOTが長すぎる患者がいる」
などを確認して、
- de-escalationの提案
- 投与期間の短縮
- 培養確認
などにつなげる場合もあります。
研究開発・創薬
新しい抗菌薬や検査法の開発支援が行われます。
大学が製薬企業と協力して開発を行うなど、様々な組織が将来の為に開発を行っています。
⑥ 国際協力
AMRは世界的課題であるため、国際的な連携も重要です。
一国が頑張って対策を取っても、耐性菌の増加は防げません。世界全体で協力していくことが重要です。
病院薬剤師の役割
AMR対策では、薬剤師の役割が非常に大きいです。
抗菌薬適正使用支援(AST)
AST(Antimicrobial Stewardship Team)では、
- 処方確認
- 用量提案
- TDM
- de-escalation提案
- 長期投与確認
などを行います。
DI業務
抗菌薬情報を医療スタッフへ提供します。
例えば、
- PK/PD情報
- 腎機能別投与設計
- 耐性率情報
- 院内採用抗菌薬情報
などが、挙げられます。
患者指導
患者へ適切な服薬説明を行うことも重要です。
例えば、
- 自己判断で中止しない
- 飲み忘れ対応
- 適切な服用方法
などが、挙げられます。
特に、痛み止めなどと混同し、「抗菌薬は原則飲み切らないといけない」と言う内容を知らない一般の方も多くいます。
また、飲み残した抗菌薬を取っておいて、後日別の症状が出た時に飲んでしまう方もちらほら見受けられます。
抗菌薬の適正使用に繋げる為にも、薬局窓口では、自己判断で中止しないことや、適切に服用する為の情報を正しく伝えることが重要です。
日病薬認定薬剤師試験で押さえたいポイント
試験対策としては、
- AMRの意味
- 抗菌薬適正使用
- ASTの役割
- 感染対策
- TDM
- de-escalation
は特に重要です。
また、
- 「抗菌薬を必要以上に使用しない」
- 「適切な薬剤を適切な期間使用する」
という考え方を理解しておくと、実務にもつながります。
新人薬剤師さんへのおすすめ勉強法
AMR分野は、実務と結びつけると理解しやすくなります。
例えば、
- なぜこの抗菌薬が選択されたのか
- なぜ広域抗菌薬から変更したのか
- なぜTDMを行うのか
を考えながら業務をすると、知識が定着しやすいです。
感染対策チームやAST回診に参加できる場合は、非常に勉強になります。
まとめ
薬剤耐性(AMR)対策アクションプランは、日本全体でAMR対策を推進するための重要な取り組みです。
病院薬剤師は、
- 抗菌薬適正使用支援
- 感染対策
- DI業務
- TDM
- 患者指導
など、多くの場面で関わっています。
日病薬認定薬剤師試験でも重要分野のため、AMRの基本的な考え方と薬剤師の役割をしっかり押さえておきましょう。
以上、hiyokoでした^^
以下の項目の試験対策としてまとめました。
日病薬病院薬学認定薬剤師認定試験 出題基準
Ⅳ.医療安全を推進する
Ⅳ-2:感染制御・管理
●薬剤耐性(AMR)対策アクションプランについて理解している。


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