今日は、hiyokoです。総合病院で薬剤師として勤務しています。
病棟薬剤師の皆さんは病棟勤務の際、看護師さんから、
「錠剤が飲めない患者さんの薬、どうしたら良いですか?」「この薬って粉砕して大丈夫ですか?」
そんな風に聞かれた経験、ありませんか?
高齢者や嚥下機能が低下している患者さん、経管投与が必要な患者さんでは、内服方法に工夫が必要になります。その中で現場でよく使われているのが簡易懸濁法です。
今回は、薬剤師として押さえておきたい基本から注意点まで、実務目線でわかりやすく解説します。
簡易懸濁法とは
簡易懸濁法とは、錠剤やカプセルを粉砕せずに、ぬるま湯で崩壊させて投与する方法です。
一般的には約55℃のお湯を使用し、一定時間放置することで薬剤を自然に崩壊させます。
簡易懸濁法が誕生するまでは、錠剤の内服が困難な患者さんの場合、粉砕機や乳棒&乳鉢で錠剤を粉末になるまで粉砕して投与するしか方法がありませんでした。
粉砕することで、錠剤の粉末が飛散し、実際に投与出来る薬の量が減るばかりか、調剤者が吸入してしまい、被曝することも。
簡易懸濁法のメリット
① チューブ閉塞のリスクが低い
粉砕した粉末は吸湿してダマになりやすく、経管チューブ閉塞の原因になります。

自宅で長期保管する場合、遮光や湿気対策に注意する必要があるね!
簡易懸濁法では、直前までPTPシートで保管する為、錠剤の吸湿を避けられます。均一に崩壊する為、閉塞リスクも減らせます。
② 薬剤の飛散がない
抗がん剤やホルモン剤など、粉砕時の曝露リスクが問題になる薬剤でも比較的安全に扱えます。
簡易懸濁法が生まれたおかげで、調剤者が被曝するリスクが減ったことは医療安全上大きな利点と考えられます。
③ 手技が簡単
特別な機械が不要で、医療現場や介護現場で誰でも再現しやすいのが大きな利点です。
資格も不要な為、手順を覚えれば、介護者や患者の家族でも投与可能です。
基本手順(実務で使える流れ)
簡易懸濁法の基本手順は次の通りです。
- 約55℃のお湯を用意する
- 錠剤・カプセルをそのまま容器に入れる
- お湯を加える
- 約10分放置する
- 軽く振って均一にする
- 投与する
錠剤によっては、5分で懸濁するものや10分かかるものもあり、確認が必要です。
また、そのままでは溶解しなくても、直前に錠剤に軽く亀裂を入れることで、懸濁が可能になる薬剤もあります。
よくあるミスと注意点
ここでは、簡易懸濁法を行う上での主な注意点をまとめていきます。
熱湯を使う
「55℃のお湯なんて用意するのが面倒」「ケトルやポットで沸かしたお湯を直接使えば良いのでは?」こう考える人もいるのではないでしょうか?
高温のお湯を使用すると、確かに容易には溶けるかもしれません。
しかし、見た目では分かりにくいですが、薬剤の成分の安定性が低下していたり、変性しているリスクもあり、おすすめできません。
55℃のお湯は、ポットのお湯と水を2:1で混ぜると作ることができます。
砕いてから入れる
「本当に溶けるか不安だから粉々に砕いてから溶かそう」そう考える人もいるかもしれません。
粉々に砕いた場合、調剤者の被曝防止など簡易懸濁法のメリットが消えてしまいます。
また、砕くと周囲や使用した容器に粉末が飛び散り、薬剤自体の回収率が低下してしまいます。
放置時間が短い
「10分も待ってられない」こんな方もいるかと思います。
時間が足りず、崩壊が不十分な場合、投与するチューブが閉塞する可能性があり危険です。
必ず、薬剤毎に指定された放置時間を守るようにしましょう。
実務で重要な注意点
ここでは、簡易懸濁法を行う上で必ず知っておきたい内容をまとめていきます。
すべての薬ができるわけではない
全ての薬剤に簡易懸濁法が使用できれば良いのですが、中には不適な薬剤もあります。
- 腸溶錠(胃で溶けないよう設計されている)
- 徐放錠(ゆっくり効く設計)
- 特殊コーティング製剤
無理に行うと効果減弱や副作用増加につながります。
ただ、腸ろうの患者さんの場合は、胃を薬が通過しない為腸溶錠でも使用することが出来るなど、患者さんによって例外となる場合もあります。
患者さんに応じた提案ができるよう薬剤の性質について理解しておきましょう。
苦味・服薬アドヒアランスの問題
錠剤の苦味をマスクする為にフィルムコーティングが行われている場合、崩壊させることで苦味が強く出る薬もあります。
経管投与の場合は問題になることは少ないですが、経口投与の場合は特に注意が必要です。
配合変化
複数薬剤を同時に懸濁すると、
- 沈殿
- 分解
- 吸着
などが起こる可能性があります。
これは、薬の成分同士が反応して、化学反応を起こす為です。
その為基本は1剤ずつ懸濁・投与が安全です。
現場あるある(薬剤師視点)
簡易懸濁法は薬剤師には馴染みのある言葉ですが、医師や看護師など他の医療スタッフへの認知度は高くない印象です。
特にどの薬剤に簡易懸濁法が使用できるか分からない為、「とりあえず粉砕で」と言われるケースも少なくありません。
一方で簡易懸濁法には医療スタッフ側、患者側双方に沢山のメリットがあります。
入院患者など、薬剤師が直接処方に関与しやすいケースに積極的に働きかけていくことで、簡易懸濁法の認知度が高まるかもしれません。
まとめ
簡易懸濁法は、
- 安全性が高く
- 手技が簡便で
- 現場で非常に有用な方法です
ただし、
- 一部の薬剤には使えない
- 製剤特性の理解が必須
という点をしっかり押さえることが重要です。
おわりに
簡易懸濁法は「知っているかどうか」で現場対応が大きく変わるスキルです。
今後は、
- 簡易懸濁可能な薬剤リスト(発案者の先生から書籍で出版されています)
- NG薬の具体例
- 経管投与トラブル対策
などもまとめていくと、より実践的な知識として活用できます。
現場で迷わないために、ぜひ日々の業務に活かしてみてください。
以上、hiyokoでした^^
以下の項目の試験対策としてまとめました。
日病薬病院薬学認定薬剤師認定試験 出題基準
Ⅱ.基本的業務の向上を図る
Ⅱ-1:調剤
●簡易懸濁法について理解している。
以下の資料を参考にしています。
・昭和大学薬学部 薬剤学教室〜倉田なおみweb site〜簡易懸濁法〜


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