今日は、hiyokoです。総合病院で薬剤師として勤務しています。
糖尿病は、日本で非常に患者数の多い慢性疾患のひとつです。
病院薬剤師として働いていると、内服薬やインスリン製剤の確認、低血糖対応、シックデイ指導など、糖尿病患者さんに関わる機会は多いのではないでしょうか。
また、糖尿病領域は日病薬認定薬剤師試験でも頻出分野です。
- HbA1cの意味
- 糖尿病の診断基準
- 糖尿病三大合併症
- SGLT2阻害薬やGLP-1受容体作動薬の特徴
- 低血糖やシックデイ対応
など、実務と試験の両方で重要な内容が多く含まれています。
近年は新しい糖尿病治療薬も増えており、「薬剤ごとの違いが覚えにくい…」と感じることもありますよね。
この記事では、糖尿病の病態から検査値、代表的な治療薬の特徴、副作用、薬剤師が押さえたいポイントまでを、日病薬認定薬剤師試験対策として整理してまとめました。
復習や知識整理の参考になれば嬉しいです。
糖尿病とは?
通常私達の体では、血糖が高くなった時に膵臓で「インスリン」というホルモンが作られます。インスリンは血糖を下げる働きをしています。
糖尿病とは、インスリンの分泌低下や作用不足によって慢性的に血糖値が高くなる疾患です。
高血糖状態が続くことで、細小血管障害(網膜症・腎症・神経障害)や、大血管障害(心筋梗塞・脳梗塞など)を引き起こす可能性があります。
日本では患者数が増加しており、薬剤師としても外来・病棟・在宅など、さまざまな場面で関わる機会の多い疾患です。
日病薬認定薬剤師試験でも頻出分野であり、病態・検査値・薬物療法の理解が重要になります。
糖尿病の分類
糖尿病は主に以下の4つに分類されます。
1型糖尿病
自己免疫などにより膵β細胞が破壊され、インスリン分泌が著しく低下するタイプです。
若年発症が多く、インスリン依存状態の為、インスリン治療が必須となります。
特徴としては、以下の内容が挙げられます。
- 急激に発症することがある
- 痩せ型が多い
1型糖尿病の場合、ケトアシドーシスを引き起こしやすく、注意が必要です。
2型糖尿病
日本人で最も多いタイプです。
インスリン分泌低下とインスリン抵抗性が組み合わさって発症します。
リスク因子としては、
- 肥満
- 運動不足
- 遺伝的要因
- 加齢
- 食生活の乱れ
などが、挙げられます。
生活習慣に起因するケースが多いため、生活習慣改善と薬物療法を組み合わせて治療を行います。
その他の特定の機序・疾患による糖尿病
膵疾患、内分泌疾患、薬剤性などによる糖尿病もあります。
原因となる薬剤例としては、
- ステロイド
- 一部の抗精神病薬
- 免疫抑制薬
などが、あります。
患者さん自身は、「健康には気をつけているから糖尿病では無いだろう」「甘いものを取っていないから大丈夫」など、自覚がないことも少なくありません。
薬剤師としては、日々の患者さんからの話を聞き、使っている薬剤で糖尿病が生じていないかの副作用モニタリングが重要になります。
妊娠糖尿病
妊娠中に初めて発見または発症した糖代謝異常です。
母体だけでなく胎児にも影響するため、厳格な血糖管理が求められます。
また、妊娠中は、胎児への影響を考慮し、使用できる薬が限られます。
薬剤師は処方監査などで、「妊娠中も使用できる薬が処方されているか」など注意して確認していく必要があります。
糖尿病の診断基準
糖尿病は血糖値やHbA1cなどを用いて診断されます。
糖尿病型と診断される検査値には、以下があります。
- 空腹時血糖値:126mg/dL以上
- 随時血糖値:200mg/dL以上
- 75gOGTT 2時間値:200mg/dL以上
- HbA1c:6.5%以上
これらを組み合わせて診断されます。
HbA1cとは?
HbA1c(ヘモグロビンエーワンシー)は、過去1〜2か月程度の平均血糖を反映する指標です。
赤血球中のヘモグロビンにブドウ糖が結合した割合を示しています。
HbA1cのポイントは、
- 食事の影響を受けにくい
- 長期的な血糖管理指標
- 糖尿病診療で頻用される
などがあり、薬剤師も患者指導でよく確認する検査値です。
ただし、あくまでも過去のデータであり、現在の血糖状態を表していないことには注意が必要です。
糖尿病の合併症
糖尿病には多くの合併症があります。
細小血管障害
語呂合わせで「しめじ」で覚えることが多いです。
- し:神経障害
- め:網膜症
- じ:腎症
糖尿病神経障害
- 手足のしびれ
- 感覚低下
- 自律神経障害
などが、生じる可能性があります。
感覚が低下する為、足先を怪我したことに気が付かず、傷口から細菌感染→皮膚組織が壊死→足を切断する、という流れになってしまう可能性も……
糖尿病網膜症
日本人の失明原因の一つです。
目の異常は、自分では気づくことが難しい為、定期的な眼科受診が重要となります。
糖尿病腎症
透析導入の原因の一つです。尿アルブミン測定が行われる場合があります。
腎症を治療せずに放っておくと、腎機能がどんどん悪化していき、最終的に透析導入となってしまう場合も……
大血管障害
動脈硬化が進行しやすくなるため、それに伴った疾患を併発しやすくなります。
主な疾患としては、
- 心筋梗塞
- 狭心症
- 脳梗塞
- 末梢動脈疾患
などがあります。その為、糖尿病では血圧・脂質管理も重要になってきます。
糖尿病治療の基本
糖尿病治療は以下の3本柱で行われます。
- 食事療法
- 運動療法
- 薬物療法
特に病院薬剤師は、「薬物療法」の分野で、アドバイスを求められることが多いです。患者ごとの病態や生活背景に合わせた治療選択が重要です。
糖尿病治療薬一覧
糖尿病薬は、主に以下の効能を目標とした薬に分けられます。
- インスリン抵抗性の改善
- インスリン分泌能の改善
- 慢性的な高血糖の改善
2026年4月現在は以下の通りとなっています。
インスリン抵抗性を改善する薬
- ビグアナイド(BG)薬
- チアゾリジン(TZD)薬
インスリン分泌を促進する薬
- テトラヒドロトリアジン(グリミン)系薬
- DPP-4阻害薬
- GLP-1受容体作動薬
- GIP/GLP-1受容体作動薬
- スルホニル尿素(SU)薬
- 速効型インスリン分泌促進(グリニド)薬
その他、インスリン自体を補充する目的でインスリン製剤も使われます。
慢性的な高血糖を改善する薬
- αーグルコシダーゼ阻害薬
- SGLT2阻害薬
糖尿病治療薬の特徴
ここでは、各糖尿病薬の特徴について記載していきます。
ビグアナイド薬
代表薬:メトホルミン
特徴
- 肝臓での糖新生抑制
- インスリン抵抗性改善
- 体重増加しにくい
用量依存的に血糖降下作用を示します。
注意点
- 乳酸アシドーシス
- 腎機能低下時に注意
- 造影検査前後で休薬確認が必要
乳酸アシドーシスを引き起こす可能性がある為、手術やヨード造影剤の使用時は、事前に休薬が必要になります。腎機能が低下していると更にリスクが上がるため、検査値の確認が重要です。
現場では、ビグアナイド系と他の薬剤の配合剤などの見落としがないか注意が必要です。特に、入院時、他院からの持参薬を確認していると、当院では見たことのない薬剤を持参している場合があり、中身にビグアナイド系が含まれていると分かり、焦ることも……
DPP-4阻害薬
代表薬:シタグリプチン、リナグリプチンなど
特徴
- インクレチン分解抑制(インクレチンを分解するDPP-4を阻害する)
- 血糖依存的にインスリン分泌促進
- 高齢者でも使われやすい
注意点
- 単剤では低血糖は比較的少ないが、SU薬併用時は低血糖に注意
単剤では、低血糖を起こしにくいこともあり、現場の処方でよく見かけます。
週1回製剤も発売されている為、毎日の内服が負担になっている患者さんにも便利です。
SGLT2阻害薬
代表薬:ダパグリフロジン、エンパグリフロジンなど
特徴
- 尿中へ糖排泄を促進
- 体重減少効果
- 心不全・腎保護効果への期待
注意点
- 脱水
- 尿路感染症
- シックデイ時の休薬
腎臓でグルコースの再吸収に関係するSGLT2を阻害して、尿糖排泄を促進します。
一方、尿に糖が多く排出されることで、尿路感染症を引き起こしやすくなります。
また、脱水の副作用もあるため、水分摂取指導が重要です。
GLP-1受容体作動薬
代表薬:セマグルチド、デュラグルチドなど
特徴
- 食欲抑制
- 体重減少効果
- 血糖依存的インスリン分泌促進
注意点
- 悪心・嘔吐
- 消化器症状
- 注射製剤が多い
近年は経口薬も登場していますが、2026年5月現在では1剤のみです。
また、体重減少効果を利用して、同じ成分別の商品名で肥満症に対しての治療に利用される薬もあります。
SU薬
代表薬:グリメピリドなど
特徴
- 強力な血糖降下作用
- インスリン分泌促進
注意点
- 低血糖
- 高齢者で特に注意
単剤でも低血糖を起こしやすい為、低血糖症状の説明が重要です。
インスリン製剤
インスリン分泌が不足している場合に使用されます。
種類
- 超速効型
- 速効型
- 中間型
- 持効型
- 配合溶解型
指導ポイント
- 注射手技
- 保管方法
- 低血糖対策
- シックデイ対応
病棟薬剤師でも関わる場面が多い分野です。
特に現場では、インスリンの空打ちや、針をつける順番など、注射する前の準備について質問されることが多いです。
新人時代、インスリンの手技について質問され、患者さんと一緒に説明書を読んで、手順を確認したことがあります。
今までは調剤することはあっても実際に使用している風景を見ることは初めてだったので、「おお、こんな感じで他の患者さんは毎日インスリンを注射しているんだな」と実感したことがあります。
同時に、インスリンの説明書には記載が多く、手順も多いため、自分が高齢者だったら、中々理解できないだろうなとも思いました。
それ以来患者窓口では、より丁寧な説明を心がけるようにしています。
シックデイとは?
発熱、下痢、食欲低下などにより通常通り食事が取れない状態を指します。
糖尿病患者では脱水やケトアシドーシスリスクが高まるため注意が必要です。
シックデイ時のポイントとしては、
- 水分摂取
- 自己判断でインスリン中止しない
- 早めの受診
- SGLT2阻害薬は休薬検討
などがあります。
特に、発熱や下痢は、感染症によって突然生じることも多く、薬剤師による事前指導が重要になってきます。
低血糖症状
低血糖では以下の症状がみられます。
自律神経症状
- 発汗
- 動悸
- 手指振戦
特に暑い日でもないのに大量の汗をかいていたり、寒くないのに手足がブルブル震えている、などの症状があれば、低血糖状態を疑う必要があります。
砂糖やブドウ糖の摂取方法や、受診目安を説明できるようにしておきたいところです。
中枢神経症状
- 意識低下
- けいれん
中枢神経症状が出た場合は、すぐに医療機関を受診する必要があります。本人は電話など難しい為、家族にも低血糖症状を説明しておくことが重要です。
薬剤師が確認したいポイント
服薬アドヒアランス
糖尿病治療は長期にわたるため、継続支援が重要です。
患者さんの中には、自覚症状がない為、薬を飲み続ける重要性を認識していない方も時々いらっしゃいます。
今後起こりうる合併症などを正しく伝え、ライフスタイルに合わせた、患者さんが続けやすい治療方法を模索していくことが重要です。
腎機能
糖尿病治療薬は腎機能によって投与量調整や使用可否が変わる場合があります。
特に以下は注意したいポイントです。
- メトホルミン
- SU剤
- DPP-4阻害薬の一部
病院では、電子カルテから患者さんの腎機能など確認することができる為、適切な投与量になっているかの確認が可能です。
また、最近では、院外処方箋に、患者さんの検査値を印字する病院も増えてきました。
患者さんの健康状態を、院外薬局と共有することで、地域に根ざした服薬支援が可能になっていると思います。
低血糖リスク
高齢者や食事摂取量低下時には低血糖リスクが高まります。
独居ではないか、周囲に支援できる人がいるかなど、患者背景を踏まえた確認が必要です。
日病薬認定薬剤師試験対策ポイント
日病薬認定試験では、糖尿病については頻出事項が多くあります。
- HbA1c
- 糖尿病診断基準
- 低血糖症状
- シックデイ
- インスリン製剤の種類
- SGLT2阻害薬の副作用
- 糖尿病三大合併症
特に副作用と患者指導は実務とも関連しやすいため、セットで覚えると理解しやすいです。
まとめ
糖尿病は薬剤師が関わる機会の多い代表的な慢性疾患です。
病態だけでなく、検査値・薬物療法・患者指導まで理解することで、日常業務にも日病薬認定薬剤師試験対策にも役立ちます。
特に近年はSGLT2阻害薬やGLP-1受容体作動薬など新しい治療薬の使用機会も増えており、それぞれの特徴や副作用を整理して覚えておきたいところです。
この記事が、糖尿病学習の復習や試験対策の参考になれば幸いです。
以上、hiyokoでした^^
以下の項目の試験対策としてまとめました。
日病薬病院薬学認定薬剤師認定試験 出題基準
Ⅴ-2:疾病・薬物療法
疾患の病態及び薬物療法について理解している。
●糖尿病
記事を作成するにあたり、以下の書籍・資料を参考にしています。
- 治療薬ハンドブック2025 薬剤選択と処方のポイント,じほう, 2025
- 各薬剤添付文書、インタビューフォーム


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